日本リズム学会 

Japan Institute of Rhythm

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35大会

 

旋法とは何か?(第7回) 

「移調の限られた旋法(MTL)」と調性 ――「非」調的音素材の島岡理論による精密分析の試み その2――

見上潤(音楽アナリスト →プロフィール

本発表シリーズ「旋法とは何か?」第1回(2014年3月29日)では、「旋法」概念を120種の「音素材」に淘汰・分類した。その中で、メシアンによるいわゆる「移調の限られた旋法」(”Les modes à transpositions limitées“ = MTL.)の7種の「旋法」を、その高次概念となる「移限音素材」15種へと拡大した。本発表は、この「非」調的な構造を持った「移限音素材」の調的コンテクストにおける「意味論」を、最新の島岡「ゆれ」理論を可能な限り適用し、メシアンおよびその他の実作品の分析・実演を通じて考察する。
本発表は、「たしかに、彼の音楽は・・・信仰的、禁欲的であるどころか甘美で官能的でさえあるし、新古典主義をとび越えてドビュッシーの印象主義の色彩性の重視に傾いているため、華麗な和音の花房を眺めるようであり、ある場合は豊穣な輝くばかりの音響の滝といった観を呈している。」という柴田南雄(1967年)の文学的とも言えるような解説にあるような音楽それ自体を音楽理論的にとらえるためには、どのような分析ツールが必要なのだろうか?という問題意識に基づいている。
そのためには、今日までに明らかにされてきた、3全音(トリトーヌス)、増3和音、減7和音、フランス6の和音等の最もシンプルな移限音素材と同様に、メシアンの移調の限られた旋法についても、その調的コンテクストにおける機能を明らかにする必要がある。
前回に引き続き、メシアンの著作『わが音楽語法』のフランス語原文を精読することによって、その論理の飛躍を埋め、作曲家自身の言説の行間を読み取り、移調の限られた旋法のメカニズムの謎に迫る。